FGO 清姫の二次創作小説  3話

  「立香くん、か」

 わたくしは昔無くしてしまった宝物を見つけたかのような晴れた気持ちで私室への道のりを歩いていきました。すると、前方から誰かがやってきました。。

 「あら。ごきげんよう清姫

 その人物はジャンヌ・オルタさんでした。いつも不機嫌そうな表情を浮かべている彼女は、カルデアに召喚された英霊でトップクラスの戦闘力を持ち、数々の難敵をいくつも屠ってきた。実際に特異点へ同行したときに横で見ていて、彼女の戦いぶりは見習わなければと感じました。

 しかし、彼女を見ていると、ひとつだけ、彼女との会話のやり取りの記憶を忘れているように感じた。あの、夢の中で感じたモヤモヤ感に似たようなものを。

 「こんにちわ。ジャンヌ・オルタさん」

 「へえ。アンタが一人おとなしく行動しているなんて珍しいわね。マスターはどうしたの?」

 「へ? マスターでしたら先ほど別れてきたばかりですが??」

 「は?頭でも打ったの??いつもマスターがカルデアにいる時は常に追いかけ……。って、アンタ、なんか霊基が変わってない?いつもより血の気が少ないというか」

 「はい。お恥ずかしながら、どうやらわたしく一部記憶を喪失してしまったようで。それで先ほど、マスターに普段のわたくしのことについてお聞きしていたところです」

 ジャンヌ・オルタさんはわたくしの言葉を聞くと、少し笑みを浮かべたように話を続けた。

 「ふ~ん、それは大変ね。それで?マスターはアンタのことについて、何を話したの?」

 「わたくしも信じられないのですが……。二人っきりの時はわたくし、マスターのことを下の名の『立香』と呼んでいるそうでして。そのことを先ほどマスターから教えていただいたのですが、それはそれは聞いてるだけで恥ずかしくなってきまして……えへへ」

 わたくしは恥ずかしさから指で頬を掻き、照れ笑いをしながら答えました。

 「…………」

 「なるほど――。アンタ達、わたしより付き合いが長いからってそんな仲になっていたのね。聞いているこっちが恥ずかしいわよ」

 ここで彼女の表情は、山の天気のようにがらりと変わったように感じました。どこかを見透かしたかのような視線が突き刺さる。

 「……でもね、その内容だとマスターはアンタに一つ隠し事をしているようね。だって、あの『病気』のことについて話してないもの」

 「病気、ですか?」

 病気。わたくしは何処かを悪くしているのでしょうか。個人で自覚できるような身体の不調は感じませんが。

 「おそらくマスターは、アンタのことを思って敢えて伝えてなかったと思うから、責めちゃ駄目よ?」

 「はい……。それで、わたくしはどのような病気を持っているのでしょうか??」

 「それは……。いや、私の言葉から知るよりも自分の目で記録データを確認した方がいいと思うわ。今、ナイチンゲールが情報管理室で各サーヴァントの記録整理をしているから、行って見せてもらうといいわ」

 「自分の目でですか?……分かりました。情報管理室ですね、わたくしちょっと行ってきますわ」

 「はい。ゆっくり堪能してきてらっしゃい」

 わたくしはナイチンゲールさんが居るという情報管理室へ向かうことにしました。

  

 

 

 

 「私より絆値が高いからって偉そうに」

 「……私、いやな女ね」